大学院進学と学会発表の薦め.
(2015.2.4)
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最近の本学の学部生を見ていると,「早く社会に出て働きたい」という人が沢山います.そして,大体はベンチャー企業と言われる若手中心の企業との面談・面接・ハッカソン?とかに参加して,どんどん,それらの会社に引き込まれる仕組みが作られています.決して,悪いこととは思いませんが・・
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果たして,それで,学部卒の学生は,それらの会社に入社して幸せなのだろうか? 本当に優秀な学生(それこそ,数学も自力で出来る,英語も外人相手に臆せず話せる.専門知識を有効に行かせている.)であれば,もしかして幸せになれるかもしれません.
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しかし殆どそれは,数えるに足らない数の人達なのですが,大半の学部生は大学院進学(修士課程)については拒むケースが多数です.
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もともと,「研究に興味がない.」「大学院に進学すると費用がかかる.」という人ほど,私は大学院に進学するべきだと思っています.本当に突き詰めて考えれば極々当然の結果が出てくるのですが,研究は,それを始めないと「興味のあるなし」なんていう議論が出来るわけではありません.とことん突き詰めてやってみて,「自分に向いてない」のであれば,納得しますが,まだ,やったことないのに,「研究に興味が持てない.」というのは,ただの食わず嫌いと同じレベルだと思います.しかも,一年の中で,研究という内容に触れられるのは,最後の1,2ヶ月程度であり,それまでは,研究ではなく,勉強だったり,模倣だったり,単純なワンパターンなアイデアの実現でしかないのです,
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しかも,学部生の間に学会発表と言っても,それは恐らく,最も良くて全国大会レベルであり,本当の技術者や研究者との議論は,研究会・ワークショップ・シンポジウムと呼ばれる公式な場での発表でしか実現できません.ましてや,海外発表なんて,論文提出から発表までの期間はとても時間を要するので,完全に無理な話である.
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学部生卒で企業に入ってしまえば,悪く言えば一つの「駒」として扱われる事になると思います.日本を含め,色んな国でも,平等社会とかいいながらも,院卒が企業や社会の趨勢を引っ張っていっているのが今日の社会です.学部卒はよほどのことがない限り,企業にとって,キーパーソンにはなれません.どうしてそうなるのかといえば,やっぱり,学会や展示会等での専門家との議論や自分の研究や技術を如何に理解してもらうかのトレーニングを大学院の中では,研究室レベルでやっていけるわけだと思います.うちの研究室でも,学会は2回以上,展示会は2回以上,インターンシップ2回を院生のうちに経験します.
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学会では,発表時や予稿をチェックしていくと,強力なライバルが必ず表れます.私も大学院1年生の時からの沢山のライバルが色んな大学や企業にいます.時には,新しいアイデアを魅せつけられ,負けを感じる時もあれば,自分が新しいアイデアや技術の披露をして,情報共有できます.それは本当に学会での切磋琢磨でしか実現出来ません.そこでの人との人生の中での本当の意味での仲間であり,ライバルだったりするわけです.
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また学会発表するときは,多くの意見が本当にたくさんもらえます.これは本当に「宝の山」です.自分の考えを学外の知らない人に学術として説明するのは,私のような教員でも恐怖を感じる時もあります.しかし,第3者の意見は,本当に役に立ちます.これは体験しないとわかりません. (意見がもらえない時は,圧倒的に説明の仕方が悪い時!)
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大学院進学には大きな意味があります.今少しでも大学院進学か企業への就職を迷っているのであれば,担当教員と相談をするべきです.
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文責:中沢実 (nakazwa@infor.kanazawa-it.ac.jp)